「ンダスケェ!なんくるないさ。」 VOL.2  2006年二月 その12まで

「ンダスケェ!なんくるないさ。」
        VOL.2  2006年二月
           その12

 小さ目なグラスに注がれたビールの二杯目の一気のみがすんだ頃には、
 「今夜はいつもの夜とは違う。」
という、忘れかけていた理性が戻ってきましてね、その後は、なめるようなビールの呑みかたをしましたよ、こお、ちびっちびっとね。
ごくっごくっの後のちびっちびっですからね、対面の叔父さん達だって気づいたんでしょう、今夜の僕は気張っているんだって事がね。
そんな僕をリラックスさせようという心遣いがひしひしと感じられる当たり障りの無い話をやり取りしているうちにね、出て来ましたよ。ええっ、待望のってやつですよ。
  ラフテー!!
そこいらのスーパーね、そう、JUSCOとかね、食堂なんかで手に入るものとは違いますよ!
手作り、ねっ!、ここん家でしか食べられないの。
世界広しといえども、今夜、ここん家でしか食べられないってぇしろ物の
  ラフテー!!
いやあ、うまかった!
もう、うまいのうまくないのったって、そりゃあ話になりませんよ。
こお、箸でつまんで口にもっていったらね、まあ、つまんだときにもね、
 「うん?大きいんじゃないか?」
とは感じていましたがね、実際大きかった。その辺で売っているやつの倍はありましたね。
一口じゃ口ん中に収まりそうも無かったもので、それをこおっ、前歯で噛み切ろうとしたらね、
 トロリ
ですよ。ほんと、
 トロリ
ってちぎれたってぇって言うか、トロリと溶け込んできたって言うか、やわらかい!兎に角やわらかい!
箸でつまめるんですから、形だってしっかりしていますよ。どろどろってんじゃないよ、箸でつまんだって崩れないんだからね。どちらかと言えば硬めじゃないかって感じでしたよ、口に入れるまではね。それが、
 トロリ
ですからね。
語彙の少ない僕ではここまでしか表現できないんだけど、うまかったんでございます。
どれくらいうまかったっって言いますと、取り戻していた理性のね、
 今夜はいつもの夜とは違う夜
ってのを忘れてしまってね、出来立てほやほやのオリオンビールをちびっちびっとなめるように呑まずにね、
 ごくっ!
 トロリ!
 ごくっ!
 トロリ!!
を、繰り返しやってしまうほどだったんです。
でもね、僕だって人の子の親、息子の事を忘れてはいませんよ。
 今夜はいつもの夜とは違う夜
って意識っていうか、理性はね、飛ばしちゃあいません。
そうですよ、
 ちびっちびっ
 トロリ
にね、戻りました。

 でね、次があったんですよ。
こいつとは初対面、五度の沖縄訪問で初めて。
 ナカミシル
ですよ。
観行やマリンスポーツなんかのレジャーで何度も訪れてる人だって、口にした事があるって人はそんなにはいないでしょう、この「ナカミシル」は。
動物性の料理、まあ獣肉の料理がね、こんなにあっさりした物になるのか?、これが獣肉か?ってね、さっぱりしてるんですよ。
たださっぱりしているだけじゃあない。だしはしっかり効いている。だしが効いているったって、だしの元なんかのだし味じゃあありませんよ。
 モノホン、本物だし味!
味付けは塩、チョウうす味。
でも、獣くささはゼロ、だし味しっかりで無臭!
椀の中にはいっぱいの消化器系はらわた、つまり胃とか腸が入っているんですがね、これがねラフテーに負けず劣らずやわらかいんですよ。
でね、その軟らかさですがね、圧力鍋なんかで手間を惜しんで料理した軟らかさとは違っていましたよ。
形はしっかりですよ。箸でつまんでも崩れない。
で、口ん中に放り込むってえと、
 トロリ
ですからね。
もう、
 今夜はいつもの夜とは違う夜
なんて意識や理性なんてものはどっかにやっちまいたくなるほどにね、
 うっまあーい!!
って代物、いや汁物でしたよ。
この「ナカミシル」のうまさは大変なものでしてね、どれだけ大変な物かってのはね、地モティーの叔父さん達までもがね口をそろえて、
 「これは、うまい!」
て言うくらいに、大変なものだったんですよ。
だってね、考えてもごらんなさい。
いつも食べなれているはずの地モティーの叔父さん達が口をそろえて
 「うまいっ!」
て、賞賛する代物、いや汁ものですよ、大変にうまかったのは確かなことでしょう?

   (つづく)
================ その11 ===============
「ンダスケェ!なんくるないさ。」
        VOL.2  2006年二月
           その11

 そんな風に気張って、なめる様にビールを呑み、出来る限り対面の叔父さんの話の聞役に徹し、普段と違う夜の、おいしく楽しい食事会のスタートを僕はきったのです。

 メインは寿司だった。いくら、生うにがある特上寿司だった。
 「いやあ、散財させちゃったなあ。」
なんて思いながら、いつもそうしているように五本ばし(手づかみ」で僕は食べ始めた。
気ィ使ってくれていたんですねえ、
 「寿司はこっちのほうが食べやすいよ、僕もそうしようね」
 「そうね、それがいいさあ。」
って、なにやら叔父さん達も箸をおき五本ばしにかえたようでしてね、忠信きっ著でうまく箸を使えずそそうをするおそれがあっただけの理由で五本ばしで食べている僕はますます緊張したんですよ。叔父さん達の、客に気まずい思いをさせてはいけないって心ね、やっぱ、地モティー。
で、気づいたんですがね、かれこれ15分ぐらいは過ぎているのにね、ええ、さっきの排尿からですよ。下腹部が意識を要求してこないって事にね。
根が嫌いじゃないもんだからね、なめる様にして呑んでいたビールを、こお、ごくっごくって呑んでみたんです。
それがうまいんですよ。
本当にうまい。
なんて言ったらいいんでしょうか、
 「ビイールー」って感覚が喉を通っていきましたよ。
で、また、ごくっごくって呑んだらグラスが空いてね、テーブルにおいて寿司をつまもうとする前に、
 こくっこくっ、こちん
です。
根が嫌いなもんじゃないんですんでね、それを
 ごくっごくっごくっごくってやっちまったんです。
まだ理性も、意識もはっきりしていましたよ。それでも一気にグラスを空けさせてしまうほどにね、ここん家のビールはうまかったんです。
食事会がお開きになって息子のアパートで彼から聞いて、そのうまさが納得できましたがね、彼らが住む名護市にはオリオンビールの本社工場があって、ここいらの住人は出来立てのほやほやをのめるってわけだったんです。
ね、僕が思わず二杯目のグラスも一気のみしたわけがわかるでしょう。

   (つづく)
==================== その10 ====================
「ンダスケェ!なんくるないさ。」
        VOL.2  2006年二月
           その10

  「円皮鍼、ぺたぺたのせいかな?」
二度目の排尿中に考えましたよ。
 「いや、あのウッチン茶のお濃いのせいかな?」
なんてね。
そりゃあ、誰だって考えちゃいますよ、たった15分ばかり前に排尿したのにもうもよおすなんて、それも、小さめのグラス一杯のビール呑んだらすぐですよ、これじゃまるでミルクのみ人形じゃあないですか。

 息子の肘をかりながら席に戻る時、排尿中に考えた疑問を息子に話すと、
 「ウッチン茶がねえ?うーん。」
答えは返ってこなかった。
席に着くと、
 「叔父さん、ウッチン茶はおしっこの出をよくするんさね?」
いやね、息子を弁護しようってんじゃないんですがね、息子も、気、張っていたんじゃないんでしょうか?この夜は。
息子は私に比べると食道楽でしてね、これからおいしく、タノシイ食事会が始まろうって時に、おしっこがどうのこうのと言う様な非常識な者じゃないんですよ、普段は。
ええ、普段は、ですよ。
今夜は普段ではなかったんでしょう。席に座るや否や、
 「おしっこよく出るんさね?」

 で、対面の叔父さん、つまり、息子に尋ねられた叔父さんね、
 「あるね。ウッチン、体にいいよ、飲もうね。」
って、僕に向かって言ってる様子だったんですよ。
 「いやああ!もーう十分でございますよ。」
て、遠慮しましたね。
たった一杯のウッチン茶で、15分に1回のはばかりでしょう、ここで追加したら何分おきにはばかられちゃうんですか?冗談じゃありませんよ。今夜は、特別な夜、息子の彼女の親族一同との初顔あわせ、そこで席を暖める間もなくはばかりに行ってられますか?
皆さんもお分かりになるでしょう。

   (つづく)