アリゾナ報告

 アリゾナ、デネ・リザベイション(ビッグマウンテン・サバイバルキャンプ)で行われたサンダンスでのボランティア治療、それにカリホルニアサンタクルーズでのDr.Bears/seminerの講師の仕事を消化し、無事帰国しました。

デネ・リザベイションでのボランティア治療は、毎年行っていましたが、サンダンスでの治療は4年ぶり、古い知り合い(インディアン)が懐かしがってくれ、連日(6日間)、治療を終えるのが午前1時前後というモテモテぶりでした。

 今年のアリゾナ治療で、最も印象深い症例をお話します。

 キャンプ(サンダンスでの治療は、いつもキャンプです)3日目の事でした。その日の治療が終了したのが午後12時30分ごろでした。テントに入り寝付いた直後(多分午前1時くらい)、 「ドクターベアー、エマーゼェンシー」と、クルーの声で起こされました。

見ると、40歳前後の女性のサンダンサー。アーバン(ダンサーが休む大きなティピ)で就寝中、下あごを毒虫に刺されたようだとのこと(30分ぐらい前)。彼女の顎を触ってみると、大人のこぶしの一回りほどの大きさに腫れていて、毒虫が刺したと思われる個所は50円玉くらいの範囲で硬くなっていました。

そして、舌がしびれると訴える彼女の話し方は、べろが麻痺しているのか、大変ゆっくりで、話すのがおっくうな様子でした。こちらの質問の応答にも、少し間が開きます。

 こんな時は、三療鍼(皮膚を切開し、血や膿などをもらすときに使う鍼)で瀉血するのが上等手段、ところが、三療鍼を入れてあるメディスンバッグが見つかりません。

そうこうしている内に、彼女の息遣いが荒くなってきました。ぐずぐすしていられません。

クルーに「卵醤」を作らせ、彼女に呑ませると同時に、ジャガイモ湿布を作るよう命じると、今度はおろし金がありません。(オー、ノー、なんてこった!)でも、今年のクルーは偉かった。ジャガイモをスライサー(これは持っていました)でスライスし、それをビニール袋に入れ、ハンマーでたたき、下ろし金ほどにはなりませんでしたが、小麦粉と混ぜ、患部にはり、治療を終了しました。

「卵醤」を呑ませてから30分ほど経過していました。彼女に気分を尋ねると、「舌の痺れが少しとれてきた」とのこと、これなら大丈夫とほっとしました。それから、彼女は「スウェット(ダンサーが入る清めの汗かき小屋)に入ってもいいか、ダンスしていいか」とききます。

僕は、「今は答えられないから、明朝、スウェットの前に見せに来て」と伝え、彼女とわかれテントに入ったのが午前2時でした。

 サンダンス中、ダンサーは、午前4時前からスウェットに入ることを思い出したのが、寝袋に入ってから、「まずい約束をした」と思ってもあとの祭り、2時間ご、「ドクターベアー、ドクターベアー」と、昨夜(?)の彼女の声で、目覚める僕でした。(続く)