AM.3.00. 覚醒、排尿後再入眠しようと試みるも入眠出来ず、便意をもようしてくる。
3.30. 起床、そして排便後、朝風呂。
4.50. 朝食: シェラネバダ麦酒小瓶1、旭日スーパドライ缶麦酒1、ライブレッド・スライスチーズサンド二枚、生セロリのチーズ巻き2本。
8.00. サンフランシスコ空港までのアシストのキヨカさんが迎えに来る。そして彼女の運転する車で一路サンフランシスコ空港へ。
8.45. サンフランシスコ空港到着。
高速道路の渋滞が予想をはるかに下回っていて、予測していたよりも30分ぐらいは早めに付きました。そして搭乗手続きも順調に進み、空港内のアシスト用の車椅子が来る間に、買い忘れていた土産のチョコレートとクッキーを購入する。
10.40. 搭乗開始。Aクラスの乗客よりも早い、一番最初の搭乗でした。まるで二重障害者のように車椅子で飛行機の搭乗口まで案内されるのは、決して悪い気分ではありません。
12.05. 離陸。
PM.1.30. 昼食: 赤ワイン小瓶2本、完全ベジタブル食。
食後30分ほど経った頃でした。何となく胸が苦しいような、どきどきするような胸苦しさのうえに、便意がありました。脈を診るとずいぶん深いところにあるらしく触れることができません。これはトイレにでも行ったほうが良いと通路を歩いていたはずでした。
それが、頭上から、
「大丈夫ですか?、大丈夫ですか?」と男性の声がするんです。いや、男性ばかりでなく、
「いわしな様。いわしな様。いわしな様。」と、聞き覚えのある女性の声も聞こえます。オオッ、あれは僕の担当のパーサーの声じゃないかなんて考えながら、「いったい俺はどうなってんだろう?」と、この状況を確認しようと意識を周囲に向けてみました。
意識を周囲に集中してみると、この声の聞こえる方角や距離感などから、どうも僕は床に寝ているらしいことが解り、それは恥ずかしいと身体を起こそうとすれば、
「ああっ、起きないで、起きないで。」と男性と女性が同時に僕の身体を抑えてくる。えええっ、そんなに重症なんかじゃないのになんて僕は思っていたので、また起きようと頭を持ち上げようとすれば、
「駄目ですよ。じっとしていて下さい。」と、額やら頬やらこめかみやらに手をあてて僕の動きを封じ込めようとする。この頭側にいて開放しているのが男性でして、意識をなくして倒れた僕でしたが、できればパーサーが頭側にいてくれたほうが良かったなあなんて、額やら顔を触っている男性の手を、不謹慎にもうらめしく思っていました。この時点で、自分は床に寝ているらしく、その周りにパーサーが2、3名、60代半ば程度の男性がいて、彼が主になって色々と介抱しているらしいことがわかりました。これじゃあじたばたしても仕方が無いとあきらめた僕は、彼等の為すがままに身を任せ、こんな時はどんなふうに人達は行動するのか観察しようと腹をくくりました。
僕の介抱に中心的な男性が、(そう、あれは僕の担当のパーサーの声でした)が、僕の足下にいる女性に、僕の足を高く揚げるように指示していました。
「これくらいですか?」と足下の女性が言う。オオッ、やっぱ、この声は僕の担当のパーサーだなんて思いつつ、彼女が僕の足を持ち上げるのを、『男に触られるより、女性に介抱される方がよっぽど気分がいいなあ。』なんて、やっぱ不謹慎な感情を僕は抱いていました。
そんな風に介抱されて2、3分ぐらい経った頃でしょうか、頭側にいて、僕の頭を軽く持ち上げたり、額やこめかみ頬に手をあて続けていた男性が、
「気分は如何ですか?。顔色が戻ってきましたよ。気分は・・・・?。」と聞いてきます。
「いやあ、お騒がせいたしました。もう大丈夫です。気分もとってもいいです。」と僕は答えます。
「そうですか。それでは、少し身体をおこしてみますか。」と言う。大丈夫みたいだと判断したんでしょう、介抱している中心的存在の男性は。で、僕が起きようとすると、
「ああっ、ダメダメ。一度横向きになって、そして膝をついてから起きて下さい。」と介抱の中心的存在の男性は、あわてた様子で声を大きくして言う。
『そんなもんかな、僕は大丈夫なんだけどな』と思いつつも指示されたとおりに横向きになってから、正座をするような姿勢で僕は跪きます。この姿勢をとるにも、前後左右から手が伸びてきて僕を支えています。度の手が、あの担当のパーサーの手なんだろうかなんて、やっぱ、この時も不謹慎な事を、僕は考えていました。、おそらく中心的存在となって解放している男性だと思いますが、跪いていた僕の脈を診て、
「力が出てきたようですね。立ち上がってみましょうか。気分は悪くありませんか?。手足が痺れているようなことはありませんか?。」と、僕の脈を診ながら彼は質問をしてきます。
「いや、なんとも無いですよ。」と、僕は、ほんとうに何でもないという声で、彼の質問に答える。ただ、彼の脈の診方に、『そんなに力を入れて脈を診なければ診得ない脈だったら、立たせない方がいいんじゃないかな。俺は未だ大丈夫ではないんじゃないかな。』なんて、介抱されながら、「大丈夫です。大丈夫です。」と答えつつ、僕は逆のことを思っていました。
「そうですか。今、何かやりたいことがありますか?。」と彼が尋ねる。
「トイレに行きたいですね。」と僕は答えます。下腹部がはり気味で、肛門の辺りがむずむずする感じがしていた僕は、正直に言いました。
「ああ、そうですか。はい、それでは、立ち上がって下さい。・・・」彼の声には、本当に大丈夫かなみたいな不安感が色濃く出ていました。
なんともないはずはなかったんです。またしても上の方から男性と、女性の声が聞こえてきます。どうやら、再度意識を、僕はなくしてしまったらしいんです。その後の僕の「大丈夫です」は、彼等には通用しなくなりました。「大丈夫ですよ。」と僕が言えば、「はい、はい、大丈夫ですよ。・・そのまま、そのまま、動かないでね。」と、介抱に中心的存在の彼は言います。おまけに、
「チーフパーサーのxxです。いわしな様、大丈夫ですよ。」と僕に話しつつ、
「xxさん、お医者様、看護師様が搭乗されているかも知れませんから、アナウンスお願いします。・・・・大丈夫ですよね、いわしな様。」だって。もう、僕の「大丈夫です。」は神通力がなくなったようでした。 (つづく)