寿寿子サンの不安げな声音は続いていた。
「これ、ちょっと呑んでくれる?八分目ぐらいにしたいんだけど。」
「うん?あー。」、
訳わかんないよと言った様子の私の手にひんやりした瓶を持たせて寿寿子さんは、
「バスで揺れたり、空港内の温度が高いせいか、発酵して溢れだしたのよ。
瓶を洗いたいから早く呑んでちょうだい。全部じゃないのよ、二割ぐらいよ!」
言い終わる頃の声音は、不安げな感じから聞き分けのない子供に言い聞かせる感じの声音の口調になっていた。
「おっ。うん。ラッキー!」
(うん?うーん?うーむ。)、あれは何だったんだ?ただの思い過ごしか?アホクサと思いつつ、手渡された瓶の口に私の口を私はもっていった。
瓶の口に口を付け、瓶を傾ける。(いわゆるラッパのみ)
「とと・と・と・と・と」音をたてながら口中に入ってくる。丁度良く冷えていた。炭酸が舌にぴりりとくる。かすかあな甘味。純度100パーセントと言って良いほどのとろみ。
「たっん」
あまりの美味さに、思わず舌を鳴らしてしまった。そして、
「うぉっふー!」
吐息がもれると同時におなかがくくっくーっと熱くなる。度数も手頃に熟成している。味見と称し、熟成途中において何度となく呑んでしまい、残りの量が全体の3分の1程度になってしまったが、約1ヶ月間寝かしただけの事はある。
上手い!
(このての物を造らせると、寿寿子さんは本当に上手いんだ。だから、美味いと上手いをかけてんだよ)