そうこうしている内に、雪解けが始まり、長い冬が終わり、草木の花が咲き始めた5月に、トムから3度目の手紙が届いた。
内容は、サンダンスの日程(これが大番狂わせになった)が、7月12日から19日に決まったこと、その会場に私のための仮設クリニックを建てていること(私が想像していたものとは、大きくかけ離れていたが)、その他、準備にお金がかかるので、少しカンパして欲しいことなどであった。
かなり具体的な内容だった。
私の心は動揺した。
私風情のつたない鍼治療をそこまでみこんでくれているのかと思ったら、今まで悩んでいたことが恥ずかしくてならなかった。
家内と話し合った。
ここまで見込まれて断るなんて、視力障害者(私たち夫婦は共に視力障害者)の恥だ、どんなことがあっても、アメリカに行って、トムの気持ちに答えてやるべきだ。
二人がこの結論を出すのに、長い時間は必要としなかった。