「笑ってよ!アリゾナ」その7

身体は疲れていた。
インディアン25人と、日本人ランナーおよびサポーター22人、合計47人を無事青森県に送り出さなくては、そして、異国で、不自由な暮らしが続き、肉体的にも精神的にも疲れていたインディアンに、少しでも安らぎを与えられたらと、今振り返ると、ただ気力だけで動いていたように思える。
何のトラブルもなく岩手から送り出せた別れ際に、トム・ラブランクが言った。
 「Dr.Bear、俺はお前に救われた。これも、あの偉大なる精霊に導かれてのことだと思う。精霊とお前に、俺は感謝の祈りをするだろう。(彼は詩人で、このような、泣かせる文句をぽんぽん語るんだ。てれちゃうぜ」そして、お前をアメリカによびたい。来年のサンダンスにお前をよびたい。」と。
私は通訳の日本語を疑った。
 「今、トムは、『サンダンス』と、本当に言ったのか?」と、思わず聞き返してしまった。
通訳がトムに確認を取る。間違いない。
 「どこのサンダンス?」と、私。
 「ビッグマウンテンだよ、Dr.Bear!」と、トム。
天にも昇る思いとは、こんな事を言うのかなと思った。