鍼灸師が見る満月

 今年の、9月28日は15夜です。
そこで、今回は僕の15夜の想いでと、プロの鍼灸師の皆様に役立つテクニックをお話しましょう。

 15夜と言えば、「ススキ」と「へそ餅」ですね。
40数年前、このススキを取りに行くのが子供たちの仕事でした。勿論僕も行きました。多くは川の土手にいきましたが、ときには山にまで足を伸ばす事もありましたね。

今思うと、不思議な事が一つあります。このススキをいける容器が、何処の家庭でも一升瓶だった事です。貧富に関係なく一升瓶です。

これに気づいたのは、小学5年の時です。
15夜に関して、作文か図画のいずれかをかいてくるという宿題が出たのです。作文を提出したのは2、3名、あとは全て図画でしたが、問題はその構図です。
縁先の小机、その上には、へそ餅のはいったお盆、一升瓶にいけられたススキ、それに空には満月、若干2名をのこし皆がこの構図でした。
担任も不思議だったんでしょうか、それとも頭にきていたのでしょうか、それらの絵を1枚、1枚、頭上に掲げ、
 「これもだ」
 「これもだ」
 「これもだ」と、顔を真っ赤にして叫んでいたのを、今もはっきりと記憶しています。

で、そのとき、僕は気づいたんです。
 「一升瓶にススキをいけるのは、俺んちだけじゃないんだ」と。あの一升瓶は貧乏くさくていやでしたが、よそんちでもそんなんだと知ったら、難だか嬉しくなった事も覚えています。

ちなみに僕の描いたものは、15夜の月明かりに照らされた富士山でした。なかなかの秀作『僕はそう思っています』でしたが、担任ときたら、逆上していたんですね、
 「この絵には、月が出ていないじゃないか!」ですって。彼は阿呆です。

 これだけではただの与太話。
月の話が出たところで、月と補・シャについて少し話しましょう。
 
 ソモンの何編だか忘れましたが、
 『月、満ればシャを、月、欠くれば補を行うべし』の記載があります。

これは、月が満月に向かっている時期に発生した病気に対してはシャ法を行え、月が新月に向かって欠けていく時期に発生した病気には補法を行えと言うのであります。

 これをどのように臨床に生かしたら良いか(?)ですが、

 たとえば、慢性疾患の患者が、毎月きまって具合を悪くするなんていうときは、上記の補・シャほうが使えます。
悪化する時期が満月以降でしたら補法中心の治療を、新月以降満月前までならばシャ法中心の治療を行えば良いのです。

 こんな例がありました。

 友人(鍼師)の娘さん(当時6歳)が、きまって満月の夜に喘息発作を起こすというのでした。この症状は3歳から続いていたそうです。この発作に対して、上記のくだりを知らない友人は(彼は経絡治療の20年選手)、ただひたすらに補法中心の治療を行ってきたそうです。その結果は、『きまって満月の夜に発作を起こすんだよ』です。
 僕の、『シャ法中心の治療』のアドバイスを受け入れてから、彼女の発作は2度と起きていません。

 あまりにも出来すぎた話しで、眉に唾をつけたくなる気持は解ります。が、これは本当の話しです。
 このパターンに当てはまる患者が居たら、お試し下さい。また、その結果も教えてください。

                                              by Dr.Bear