「ンダスケェ!なんくるないさ。」 VOL.2  2006年二月 その9

 さっき、トイレに行って、まだ15分ぐらいしかたっていないんだ。
まあ、でも、まだ我慢できるし、 せっかく対面に叔父さんも座ったことだし、
 「盛岡は寒くてね、それに比べ、こちらは暖かくて結構ですね。」
とか、
 「いやあ、いつも打ちのせがれがお世話になりまして・・・・。」
とか何とか、世間話でもしていれば、気も紛れるだろうと考え、対面に座った叔父さんに話しかけようとしたら、
 「まあ、まだ何も出てませんが、まず、一杯。ビールはいけますか?」
 「ええ、まあ、嫌いなほうではないですけど・・・。」
って、僕が答える前から、いつの間に用意したのかグラスにビールを注ぎ始めたんですよ。
グラスに注がれるビールの音、
 こく、こく、こく、こく、こく、こちん!
いつもならね、この音がたまらないんですがね、今夜は普段とは違う夜。
調子に乗って馬鹿騒ぎは出来ない夜。
って、思っていたんですがね、根が嫌いなほうじゃない、顔に出ていたんで
しょうか、控え目に一口呑んだだけでしたよ。
そしたら、対面の叔父さん、
 「おおっ!生ける口ですね。ま、まあっ、ぐっと、ぐっと。」
と対面の叔父さんが薦めるものを無碍に断るのもなんだと思いましてね、まあ、小さなグラスでしたから一気にあけちまいました。
 こく、こく、こく、こく、こく、こちん。
って、すかさず叔父さんがグラスに注ぎましたよ。
 「やばい」
ってね、根が嫌いじゃなくても、まだこの段階では思いますよ。
ただね、今夜は特別の夜、息子のためにしっかりしなきゃあ、あかんって気で、やばいって思ったんじゃなくて、
急に我慢が出来ないくらいに下腹部が意識を要求してきたんです。
なんか、こお、やばいって感じですよ。
これも、隣に息子が座っているって安心感が、こんなにパツンパツンになるまで気づかなかったんでしょうか?
でね、もう大変。二杯目を注いでくれた叔父さんに礼なんか言う暇はありませんよ。
一言、
 「トイレ」
って息子の袖を引いて、腰を持ち上げながら、
 「ちょっと、はばかりへ!歳なんでしょうか?もう、ちかくって!」
顔だけは叔父さんに向け、体はトイレに向け、15分前同様、
がにまたで、
小またでちょこちょこゆっくりと、
と、息子の肘を借りてトイレに向かったんですよ。

   (つづく)