「ンダスケ、なんくるないさ」  その4

 で、普通の親の苦労はこれだけではありませんでした。
飛行機に搭乗する前の荷物チェックがあるのです。そして、機内に瓶類を持ちこむ時は、その瓶の栓を開封していないことを確かめられます。
この密造酒は勿論栓を開封してあります。そうしないと瓶が破裂する危険があるからです。
でも、荷物チェックを通過する為には栓をきちっと締めなくてはいけません。
そこで私達(いや、ほとんど寿寿子さん一人で考え付いたんだけど)は、荷物チェックを通過するまでは瓶の口栓をきちっと締め、通過後直ちに栓を緩めるほう法がベストであると結論づけました。
ただ、問題はそれだけではなかった。
この密造酒の臭いです。
米が発酵している時の臭い、それはもうかぐわしいもので、それにかなり強烈なものだから、これだけは隠せないか?ばれた時は、その場で残り全部を呑んでしまおうと腹をくくった。

密造酒の入ったデイバックや手荷物なんかをベルトコンベアに乗せ、金属探知機ゲートを寿寿子さんが先に通る。
ついで職員(勿論女性、それに寿寿子さんよりは確実に20歳は若いだろう)に手を引かれた私が通る。
 「ブー」ブザーが鳴る。
不思議と、何時も鳴る。成田でも、ロスでも、サンノゼでも鳴る
アリゾナのフラッグスタッフでは、どのように通っても何度通っても、
 「ブー」
 「ブー」
 「ブー」って鳴り続けて、6・7回ぐらい繰り返した後で、
 「OK! No problem」
だってさ、一体なんなんだ。
怪しい男と助平な男の見分けも出来ないんか、この探知機は。なんて思いをしたことがありました。

私の手を引いてくれた女性職員がボディチェックをする。
9・11以後、このチェックがすごいんだ。太腿の内側を、あそこに触れんばかりに撫で上げる。
そりゃあね、男は誰でも股間に金属の名前がついた物をぶら下げているけどさ、
この金属の名前を持つ物は金属探知機には反応しないはずだよ、ベイビー!
でも、結構気持ちがいい(スケベ)。