「笑ってよ!アリゾナ」その14

 そうこうしている内に、6月3日の第1土曜日になった。
東洋はり医学会、本部定期講習を受けるために上京した。
上野駅には、友人の佐野が出迎えてくれる。
彼のねぐらがある築地の焼鳥屋でいっぱいやる。
いつもの様に、いつもの店で、生ビールにもつ類の串焼きで、 「それじゃあ、どうも、どうも、乾杯!」と、グラスを合わせる。
ここまではいつもと変わらなかった。が、この日は違った。
アリゾナ行きについて、それまで、佐野には話してなかったので、今までの経過とかドライバーが見つからなくて困ってることなどを話した。
すると、彼が、
 「俺が行ってやるよ。今から免許を取れば間に合うだろう。」
彼は、数年前に飲酒運転で免許証を取り消されていた。だから先程の「今から取れば、間に合うだろう」のせりふになったのだ。
だが、彼の勤めている会社は、太田の市場に新しく出店し、彼はそこの店長になるため忙しく、アリゾナにゆく時間など取れないはずだ。
 「マジか?」
と、私。
 「あたぼうよ、お前の為じゃないか。大マジ。」
と、彼。
3分の1ほど残っていたジョッーのビールを、私は一気に呑み干した。
信じられない思いと、どうして早くから、こいつに話しかけなかったんだろうとの気持ちが入り混じって、
 「大生、おかわり!2個っ!」
と、叫んでいた。