こんなふうに、1989年、記念すべき年の幕は開いていったが、私のアリゾナ行きのための諸問題は、遅々として解決しなかった。
これは、考えても仕方のないことだが、こんな状況になると影が見え隠れする妄想があった。それは、 「俺の目が見えていたら、全てがすんなりと決まるのに」なのである。
まったく、馬鹿げた話しであるが、私の悪癖である、ちょピット、脳裏をかすめてしまう。
だが、この気持ちは誰にも話さなかったし、一度も口に出さなかった。
こんな弱気を口に出したその時点で、アリゾナ行きはおじゃんになるだろうとの、確実な予感があったからだ。