「笑ってよ!アリゾナ」その6

 トム・ラブランクの鍼治療に対する認識は、一変したようだった。
その日から、トム・らぶらんくをはじめ、インディアンランナー達一行が岩手を離れるまでの私の忙しさが、それを証明している。
ピースランの一行は、岩手県を6日かけて走ったが、昼は車の中で、それも私が目標としたランニングの距離を走り終えた直後に、夜は宿泊所で、レストデイには私の治療院で、彼等に、私は鍼治療をし続けたのである。

それは、岩手県でのピースラン、二日目、花巻での夜だった。
サポーターのおっちゃんが提供してくれた宿泊所は、野菜栽培用のビニールハウスだった。(ナイスアイデア)夕食後、前夜と同様、何人目かのインディアンランナーへの鍼治療中に、トム・ラブランクがムーンセレモニーをやるので、私に参加して欲しいといわれた。
 「すぐ行くから」と返事して、治療中のインディアンランナーへの治療を終了したときには、トム・ラブランクのムーンセレモニーは始まっていた。メディスンサークルの端に座った。
トム・ラブランクの月への感謝の祈りが終わった。
ピースパイプが回ってきた。私が最後だ。ピースパイプをトム・ラブランクに返した。
彼は語りだした。我が家での喘息発作のこと、治療を受けたこと、この二日間の私の治療行為のことを話し、最後に、 「私は、彼にDr.Bearの名前をあげたい。」と、言った。
イーグルフェザーと共に、Dr.Bearが、私にやってきた。
その夜から、インディアン達は、私のことをDr.Bearと呼ぶようになったのである。